道南へ。秋の道しるべ(2/4)

※一部訂正(9月7日)

(つづき)

イカ喰い道の探求
 土地のものを食べる。これは旅の楽しみであり、その町を知る最良の手段でもあり、地元の人と接する大切な機会でもあります。ひとつ例をあげてみましょうか。
 函館人にとってイカは珍しい食材ではありません。しかし、旅先ではその土地のイカを食べてみるべきだと思っています。

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海藻おしばでつくったイカ。住吉漁港で採集したアナダルスという海藻をもちいている。ちなみにイカの足8本+触腕2本を忠実に再現。

 真イカ(スルメイカ)は1年かけて日本周辺の海を回遊しています(南方で生まれて、成長しながら北上し、産卵のために再び南下します)。おもに日本海を往来するのですが、勢いよく北方へ泳ぎ着いたイカは、宗谷海峡を通ってオホーツク海へ出て行きます。津軽海峡へ進路を変えて、太平洋や噴火湾にたどり着くイカもいます。
 日本海のイカ漁は針で釣り上げる漁法ですが、太平洋側(道東沖・東北沖)では網ですくいとる漁法が一般的です。函館(道南)沖ではイカ釣り漁がおこなわれているため、魚体への傷やストレスが少なく、生け簀イカ(つまり生きているイカ)など鮮度の高いイカが豊富で、それが「函館のイカがうまい理由」のひとつです。すいません。イカのことを書き始めると止まらなくなります。そのわりに、このブログで函館のイカがうまい理由(というか主張)をほとんど書いてきませんでしたが。
 イカ刺しの薬味に注目してみます。定番のワサビ、僕がいちばん好きなおろしショウガ、父の田舎で食べた辛み大根、うまいけど(体への)罪悪感にあふれるイカゴロ乗せ、などさまざまです。
 食べ方の作法もいくつかあります。細く長く上品に並んだイカ刺しもあれば、山盛り食べ放題おかわり自由、イカソーメンのような工夫もあります。いちばんうまいイカ刺しの食べ方は、「しょうゆを垂らして泡立つまでかき混ぜる」ことだと主張する人にも出会えるでしょう。イカひとつでも、いろんな驚きや出会いがあり、それが旅の会話をぐんぐん弾ませます。

※イカとイカ漁に関しては、足立倫行さんの名著『日本海のイカ』(情報センター/新潮文庫、いずれも絶版もしくは在庫切れ。電子書店パピレスで購読できる)を読んでもらいたい。

(つづく)

※訂正箇所:函館(道南沖)のイカ漁が「網」ですくう漁法と誤解される表現をしていた箇所を訂正。失礼しました。

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プロフィール

高山潤
函館市および道南圏(渡島・檜山)を拠点に活動するフリーランスのライター、編集者、版元、TVディレクター、奥尻島旅人。元C型肝炎患者(抗ウィルス治療でウィルス再燃、インターフェロン・リバビリン併用療法でウィルス消滅で寛解)、2型糖尿病患者(慢性高血糖症・DM・2009年6月より療養中)。酒豪。函館市(亀田地区)出身、第一次オイルショックの年に生まれる。父母はいわゆる団塊世代。取材活動のテーマは、民衆史(色川史学)を軸にした人・街・暮らしのルポルタージュ、地域の文化や歴史の再発見、身近な話題や出来事への驚きと感動。詳しくはWEBサイト「ものかき工房」にて。NCV「函館酒場寄港」案内人、NCV「函館図鑑」調査員(企画・構成・取材・出演・ナレーション)。


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