糖尿病入院日記:7月12日(退院後の準備、靴を買う。)

7月12日(日)

そして、糖尿病入院七日目。函館中央病院にて。

思わず4時半に起床。
便秘。どうにか出す物を出してから体重測定をしたい。
5時半、向かい合わせの病棟の後ろから朝日が昇ってくる。
ここちよい。今日は13時から外出予定。晴れてると良いな。

6時10分、血圧測定。「あら、今朝は良いですね。」
154の93。ほんとだ。すげー。日曜日だから高血圧も休みか。
体重測定のリミットまで45分、便意なし。どうする。

で、出せないまま体重測定。102.6kg。くそっ。体重減少も日曜日か。
ぜったいに大腸付近に400gくらい入っているはずだ。

昨日いただいた花籠に水をやりながら、
俺はこんなもので終わる人間じゃない、と決意を新たにする。
10年ほど前、やはり100kg近くあった体重を、半年で25kgほど減らしたことがある。
医者に言われた訳ではなく、当時、気になっていた女性に交際を申し込んだら、
かるく鼻で笑われつつ「痩せたらね」と言われたからだ。
あたしゃ発憤(あれ、発奮か。辞書を見たら同じだった。)しましたね。
というわけで痩せました。
どんどんお洋服の値段が安くなって嬉しかったね。
彼女のためにおしゃれもしたかったし。
ただし、その減量方法は「若さ」と「時間」のおかげで実行できたもの。
とにかくメシは減らした。お米は茶碗の底にほんのり軽く。
お昼はカロリーメイト。あれは1本200kcalだから計算しやすい。
で、歩きました。3時間も4時間も。
当時、無職でしたから。いや、夢に向かって挑戦中だったから。
よーするにヒマだったので。コンビニバイトとたまに来る撮影の仕事だけ。
歩きすぎて、いま思えばハンガーノック(低血糖症)で動けなくなるときもあった。
そんな無茶な努力のおかげで、誰もが心配するほど痩せていった。
無事に意中の女性とも交際ができ、愛の強さを示したわけである。
まっ、その方と結婚したわけですが、けっきょく体重はリバウンドしてるけど。
あー。愛が薄まったわけではないぞー。いや、ほんとに。ほんとほんと。
ただ、最近、健康に対して自暴自棄ではあったな。いろいろあって。

ん、こんな話を書くつもりじゃなかったのに。ま、いっか。

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◆朝食。牛乳がないじゃないか!

9時5分。血圧測定、129の85。いいねー。薬物万歳。
向かいの爺さんが看護師さんに年齢を聞かれて、
「わがんねんだ。九十なんぼだ。」と答えていた。
違うでしょ、と言われて「大正2年だもの」と。
大正2年だと、1913年生まれで96歳か。ふむ。見た目はそんな感じだが。
実際は80代後半とのこと。後期高齢者であることに変わりなし。
それにしても、後期高齢者ってすげーネーミングだな。

ちょっとして、また年齢を聞かれたら「大正12年だ」と言っていた。
なんだよ。思わず声を出して笑っちまったよ。

9時半、締め切りが迫ってきたので仕方なく原稿書き。
今月末に発行する道新「函館港まつり」特集の記事。
なんだかんだと、もう8年くらい書かせてもらっている。
お祭は参加してなんぼである。開港記念イベントとあわせて盛り上がってほしいと願う。

10時35分、担当の看護師Sさんが来て、薬(アマリール)を回収していく。
10時40分、Ws先生の回診。日曜日も働いてるんだな。自営業と変わらんね。
昨日の検査(食後のターゲス)の結果、昼食後の血糖値が下がりすぎだという。
そのわりに朝食後の下がり方がいまいちだとも。
おそらく、インスリンが遅れて働き出すのだろう、と。
インスリンは飼い主に似る。ってやつだ。のんきな膵臓である。

  そう言えば、先日、実家に寄ったとき、本棚の奥で成績表(通知簿)を見つけた。
  親が保存しておいたものだろう。そういうもんなんだな。
  で、成績はずっと下の中なので、見てもつまらないのだけど、
  後ろにある先生の通信欄を読んだら面白かった。
  とにかく、小学校・中学校・高校と、すべての先生に
  「とくに問題行動はないが、計画性を身につけていきましょう。」
  と書かれていた。先生方、ごめんなさい。そのまま大人になりました。

閑話休題。
で、アマリールという「膵臓にムチ打つ薬」(主治医の表現)を減らすことに。
むふふふふ。どうよ、この快復力。若いってことか。ことか?
5mmくらいの錠剤を半分に割るんだって。職人技だな。
こちらから腎臓の検査の話をふる。
「腎臓の生検をやってもらおうかと思います。」「覚悟できましたか。」
いや、覚悟はできていない。できていないけど、治療への克己心が最大値だから。
このタイミングを逃すと、きっと、次は、ない。

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◆そんなわけで、これが入院中の最大投薬量ということになる。
◆勝手に手相占いをしないように願います。

11時、妻から電話。今日はPTAの資源回収のお手伝いだったそうで。
このブログを読んで、長くて読むの疲れると言われた。
このやろう。おまえそれでも文筆家のつれあいか。
長いのは、まずは自分のための記録だからなんだよ。
病気のことだけ書いても気晴らしにならんし。数字だけ並べてもつまんないし。
ひまを見つけてぼちぼち読んでくれ。

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◆はじめてパンが出た。

11時半、昼食。パンはちょっと胃にもたれるんだよな。
あーーーー、神戸こむぎ館のパンを食べたいなー。退院したら絶対食べよ。
ジャム(砂糖不使用)はこれぽっちで20kcalと書いてあったので、
くやしいので85%くらい残してやった。

13時10分、お出かけ。まずは、松風町の丸山靴店へ。
空に雲はありながらも晴れて気持ちよい。風もここちよい。

人力のスピードは適度な視覚情報を処理しながら思考にふけるのにちょうど良い。
そう言えば、どんな仕事でも楽しんでいたころ、原稿書きに行き詰まると
よく散歩をしていたなぁ。歩いているうちに、どんどん書きたいことがあふれてきて、
机の前に戻ると気持ちよく筆が進んだ。最近、忘れてたな。

青年センターの前まで歩いて、事務所のカギを忘れたことに気が付く。
いったん病室に戻り再出発。ちょっと時間をロスしてしまったので電車に乗る。
ていうか、市電は便利だよな。遅れないし。次は沿線に引っ越そうと思う。
松風町電停で下車。白衣の若者が、大門のアーケード歩道を清掃してた。
なんの団体なんだろう。学生っぽかったが。
大門広小路(グリーンプラザ)では、オープンカフェの「実証実験」。
どこのヒモ付きなんだ。なにを実験してるんだろ。

さて、丸山靴店。3、4年ぶりにシューフィッターの丸山さんに会う。
愛用の靴、ワールドマーチ(WM502 PRIDE)。もう8年もはき続けている。
本当はソールを交換できるのだが、皮の手入れもせずに履きつぶしてる。
1度買い換えたので、いまのは二足目である。
事前にネットで調べると、ちゃんと今も、まったく同じものが製造販売されている。
それほどしっかりと設計された靴ということ。もちろん人気も評価も高い。
8年前、靴の記事を書くために、丸山靴店を訪れたときに出会った。
当時、よれよれのブーツをはいていたのだが、
ほんとうに少し歩くだけで足の裏が痛くて、水ぶくれができるくらいだった。
取材のついでだったので丸山さんに相談すると、
靴が悪すぎると言われた。足を測定・診断してもらい、
歩きの実情を聞いてもらった上ですすめられたのがこの靴である。
はき替えたとたんに、足の痛みはすっかり消えた。
大げさでなく、いくら歩いても足は痛くならないのだ。まるで魔法のように。
改めてメーカーのサイトを確認すると、
「1日40km以上歩くウォーカーのための究極の1足。」とあった。
函館から木古内である。函館から森町である。そんなに歩けないし歩かない。
でも、全力で僕の足をサポートしてくれる靴だ。マジでおすすめ。

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◆これ。いっさい手入れをしていないので見る影もないが、ほんとに良い靴です。

今回も同じ靴を買おうと思っていたのだが、専門家の意見も聴いてみたいところ。
「人気があるのはヨネックスですね。クッション性能が高い靴底で、
 踏み出しが軽く、気持ちよく歩けますから。」
体が重いと膝にくるしなぁ。
「僕がいま愛用している靴と性能的な違いは有るのでしょうか?」
「快適に歩くという点では同じだと思います。ヨネックスの方は、
 歩きごごちが軽いと感じると思いますよ。耐久性も同程度です。
 高山さんはあんまりお手入れをされる方ではないので、
 こちらの靴のほうが良いかも知れませんね。」
かるく逡巡した上で、足下をモデルチェンジすることにした。
購入したのは「YONEX 旅ウォーク MT-03」。
6mの高さから卵を落としても割れないパワークッション採用。
道具にこだわるのは好きだ。そして、プロを相手に買い物をするのも好きだ。
こちらの要望や質問にぱきぱきと応えていく接客。これでしょう。

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◆若松町の長屋建築。軒のよれ具合がよろしい。

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◆雑草が演出する小路の踏み跡。積み重なった時間が見える。

14時半、海岸町の事務所まで写真を撮りながら歩く。
駅前からゆっくり歩いて約20分だった。
事務所で「海藻おしば」作品のラミネート加工。
途中、仙石くんとなおちゃんが顔を出す。
「あれ、また、いる。」「あれ、見つかっちゃった。」
約束の17時までに作業が終わりそうもないので病棟へ電話。
17時半にまけてもらう。日ごろのおこないが良いのであっさり許可。
17時10分、ようやく作業終了。あとは病室に持ち帰って最後の工程をおこなおう。
オーシャンタクシーに電話。「あっ、お向かいの高山さんですね。」
運転手さんとの会話が大好きだ。
「モーモータクシーに対抗して、イカタクシーとかどうすかね?」
あんまり唐突すぎて、運転手さんが反応しにくそうだった。中央病院まで930円。
17時25分、病棟に帰還。ぎりぎりだった。

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◆谷地頭町「酒保 小西酒店」 純粋もっきり屋さんです。厳密に言えば、立ち飲み屋とは違う。
◆あくまで酒屋さん。火を使った調理はできない。お燗もダメ(レンジでチンはオッケー)。
◆いわゆる立ち飲み屋とは、客席における飲酒時姿勢が「立っている」ということ。

17時半、テーブルの上の●ー●●●コ●をベッドの上に移動し、
配膳された夕食のトレーを乗せたとき、背後から声が。
振り返ると、「函館酒場寄港」の収録でお知り合いになった高橋さんだ。
びっくり。ブログを読んで、とのこと。すいません。催促したみたいで。
谷地頭町の小西酒店で赤玉スイートワインをご馳走になった。
なぜか、次の収録先(丸善瀧澤酒店)でもご一緒になって、
収録後、大門広小路沿いの「フェルマータ」でもう一杯。
「収録の時はすでに不調だったんですね。飲ませてしまって申し訳ない。」
とんでもない。好き好んで飲んだくれていただけで。うまい酒でした。
高橋さんの名刺には「好きです 酒と音楽と落語」とある。
思い切り趣味嗜好が重なってるんですが。ちなみに、僕の贔屓は志ん生ですな。
しかも、ツールを観戦しているそうだ。くそ。くそ。俺も俺も。
夏には江差までのサイクリングに誘われる。ママチャリで。
退院したら新しい自転車(クロスバイク)を購入しようと思っていたので
ちょうど良いかも知れない。距離にして約80kmだって。
一献の縁でわざわざお越しいただいて恐縮です。そして感激です。

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◆大相撲を聴きながら夕食。

ご飯、サバ塩焼き、もやし、フキ炒め、味噌汁(白菜)、減塩醤油、大根おろし。
そして肉じゃが。今夜のは肉が入っている。俺は幸せ者だ。
これでビールが飲めたら、もっと幸せだろう。月2回、月2回、月2回...。

採尿用の紙コップを渡される。明日、腎臓の件で泌尿器科で診察。
入院中に検査はできないか確認したら、別の病気なので一連の治療にはならないそうだ。
たぶん、医療制度上のことなんだろうけど、いびつな感じがするね。
それにしても、痛い検査はイヤだな。これ以上、病気を抱えるのも凹むわ。
仕方ないけど。

嗚呼、もう消灯の時間は過ぎている。
忙しくて原稿を書くヒマがなかった。明日、起きてからだな。

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プロフィール

高山潤
函館市および道南圏(渡島・檜山)を拠点に活動するフリーランスのライター、編集者、版元、TVディレクター、奥尻島旅人。元C型肝炎患者(抗ウィルス治療でウィルス再燃、インターフェロン・リバビリン併用療法でウィルス消滅で寛解)、2型糖尿病患者(慢性高血糖症・DM・2009年6月より療養中)。酒豪。函館市(亀田地区)出身、第一次オイルショックの年に生まれる。父母はいわゆる団塊世代。取材活動のテーマは、民衆史(色川史学)を軸にした人・街・暮らしのルポルタージュ、地域の文化や歴史の再発見、身近な話題や出来事への驚きと感動。詳しくはWEBサイト「ものかき工房」にて。NCV「函館酒場寄港」案内人、NCV「函館図鑑」調査員(企画・構成・取材・出演・ナレーション)。


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