糖尿病入院日記:7月14日(病気を知る、病気を防ぐ)

7月14日(火)

いかにも、糖尿病の治療のために入院中。ここの亀。九日目。
この病院の正式名称は「無料又は低額医療施設 函館中央病院」という。

隣の爺さんが病室に戻ってくる。それで起きた。4時起床。
少しは落ち着いたのだろうか。ちょっぴりストレス素因。
まぁ、お互い様のご近所づきあいだし。

4時半から原稿書き。9時くらいまでにはアップしたい。
今日は天気も良くて暑くなりそうだ。

採尿。便秘。体重測定はまたあとで。
6時50分、看護師さんにうながされて体重測定。
その前にトイレに行くものの、出ず。ちくしょう。
本日の体重102.2kg。600g増量。昨日お散歩してないしな。
頭脳労働はカロリーを消費するけど、体重減少までには至らない。
100kgを切ったら、お祝いに焼き肉食べ放題へ行きたい気分だ。
(お酒じゃないところに注目すべきだと思うよ。)

隣の爺さんが、どうやらしきりに看護師さんの腹をさわるらしい。
「だめ。そこはお父さんのものだから。」
カーテンの向こうから聞こえてくる会話に、
窓際のふたり(俺と昨日入院したおじさん)が思わず笑い出す。
笑いが止まらない。なにしてんだよ。

朝日がまぶしい。
7時半、朝食。ご飯、味噌汁、温泉卵、煮野菜、牛乳。牛乳は昨日の残りを飲む。
入院前は1日1リットルだったけど。
牛乳もお米も仕事だからとずいぶん大量に摂取していたな。

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◆野菜は煮てしまうと、こんなもんかってくらい体積が小さくなる。

血圧測定147の83。
低いねぇ。いいねぇ。投薬前、頭痛かったな。

朝食後、いっきに追い込んで9時前に原稿アップ。
今日は腎臓の診察があるから、午前中の仕事はこれまでかも知れない。

9時、川嶋先生から電話。来月、腰の病気で入院するという。
しかも、ここ函館中央病院に。
「実は、いま中央病院に入院してるんですよ。」
「あらあらまあ。」と、いつものように川嶋先生は上品に驚く。
本当はすぐに入院と言われたらしい。
ただ、26日に北洋資料館の海藻おしば教室があるので、
その後でということにしたという。川嶋先生は今年で82歳。
さすがに、あんまり無理をさせてはいけない年齢だ。

10時、便通。30分で3回ほど通う。そのたびに出る。
最初は堅く、そして軟らかくなった。
くそー。これが体重測定前に出ていればなぁ。

まだ診察のお声がかからない。向かいのおじさんと世間話。
なぜか名刺交換。退院したら、おじさんの職場に行くと約束する。

昨日アマゾンから届いていた糖尿病の本をぱらぱらと読む。
「糖尿病」で書籍検索してみたが、出版点数は多いものの
意外なくらい(俺に)役立ちそうな本が見つからなかい。民間療法が多い。
そのなかで糖尿病の専門医が書いた本を購入した。

牧田善二著『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)
二宮陸雄・高崎千穂著『糖尿病とたたかう 専門医が書いた最先端の治療法と知識』(ベスト新書)

いずれも糖尿病治療の重要さ(合併症の重大さ)を知ることと、
必要以上の不安を取り除くことに適した内容を持つ書籍だと思う。
(不安が募ると病院から足が遠のくものである。)
どちらも治療に関する「新しい知識」を得ることが重要だと書いてあった。
患者自身さえも抱いてしまう糖尿病への偏見を霧消させてくれる内容だ。
いまや糖尿病は国民病となった。それならば、患者や家族に限らず
誰もが糖尿病について知るべきではないだろうか。
どうしても慢性化する病気だから、社会的な治療コストはかさんでいく。
予防医療の観点からも、「知る」ことは「防ぐ」ことにつながる。

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◆昨日、一森さんからいただいた包みを開けてみる。まろみのある茶でおいしい。

たぶん11時くらい。主治医の回診。
「やっぱり血圧がまだちょっと高いので、明日から薬を半分に割ったものを追加します。」
そうですか。頑固な血圧ですな。
「昨日、聞きそびれたことがいくつかあるんですが。」
「はい。どうぞ。」
「通院のきっかけになった膿傷の状態はどうなったのでしょうか?」
「血液検査の結果では、いわゆる炎症を示す数値は出ていませんから、体の中の膿は消えていると思いますよ。」
「じゃっかん、腫れがあった場所に違和感を覚えるときがあるんですが。」
「膿は消えても、そこに膿があった跡は残ってしまうんですよ。」
「わかりました。あと、血液検査で見つかった●●●●については、どういった治療をしていくのでしょうか。」
「耳にしたことがあると思いますが、●●●●●●●●を使った治療などがありますが、いずれにしても、まずは高血糖の状態をどうにかしなくちゃいけないので、その後になりますね。」
「退院後の外来診察日を決めておきたいのですが。1カ月後くらいでしょうかね?」
「そうですねー。あんまり時間をおくと、高山さんはまた食生活が乱れる恐れもありますから、最初は早い方がいいかなー。」
びたいち信用されず。でも、僕のような暴飲暴食による糖尿病患者は、
たぶん嘘つきばかりだから、信用すんなというマニュアルがあるのかも知れない。
つーことで、8月6日に決定。広島原爆の日だ。
「眼科で網膜症の検査を受けたとき、退院後に落ち着いたら、もう一度診察を受けてと言われているのですが。」
「あっ、それは勝手にどうぞ。いつでもかまわないです。」
くくく、たまに言葉の選択を間違えるんだよね。

けっきょく午前中は診察なし。
11時45分、お昼でございます。

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◆お醤油が2袋。どちらも使用せず。どんどん貯まっていく。お金もそうありたい。

塩豆ご飯、平べったい焼き魚、ほうれんそう、キュウリの梅酢、大根おろし。

13時、ようやく呼び出し。
腎臓は泌尿器科。待合室でしばし待機。眠くなって、うつらうつら。
40分後、ようやく診察室へ。
あれ、また若い女医さんだ。いや、べつに性別は関係ないんだけど、
主治医に続いてなので、ちょっと驚く。
診察台に横になって、はい失礼しますと、ズボンを降ろされる。
いやーん、どこまでかしら。...お腹の下まででした。
くまのプーさんパンツを脱がされることはありませんでした。
「なるほどぉ」。どこに納得したんだろう。
うつぶせになってエコーの検査。
「あれ(ぐいっ)、あれ(ぐいっ)、深いですね。」
(ぐいっ)というのは検査器具を押しつける描写である。
「その深いってのは、つまり厚いってことですか。ですよね。」
「そうですね。脂肪があって、腎臓がけっこう深い位置にありますね。」
「だんだん、浅くなってくる予定なんですが。」
「腎臓の生検のためには、背中から針のようなものを入れて、エコーの映像を見ながら腎臓に射し込んで細胞を採取するんです。腎臓は血管がたくさん集まった臓器ですから、出血のリスクがあるんですが、高山さんの場合は少しそのリスクが高いと思います。それに、針が届かないかも。いや、届くかな。」
正直、刺された後で、失敗しました、もう1回ってのはイヤだ。
「じゃあ、なるべくリスクを減らすように、脂肪を燃焼する努力をしますので。1カ月とか2カ月後にでも。」
「じゃあ、いまWs先生に確認してみますので。」
電話。オッケーが出たようだ。たぶん、「どーぞー」的な回答だろう。
「では9月10日くらいの予定で。木曜日に入院して、金曜日に検査をして、月曜日に退院というスケジュールになると思います。詳しくは、木曜日にもう一度こちらにいらしてください。」
「あのー、これは検査入院になるわけですね。」
「そうですね」。そっか。
検査入院だと生命保険は出るんだろうか。お金が続くか心配だ。手術だと給付されるみたいだけど。

13時55分、いったん病室に戻ってから、すぐに糖尿病教室へ。
今日は外部講師(糖尿病の専門医、らしい)の講義。実は楽しみにしてた。
内容は糖尿病とその合併症に関する基本的なお話。
ビデオなどより、生の説明の方が知識が頭になじみやすい気がする。
ただ、30分という時間は短くて、早口で一方的な講義になってしまっていた。
「話したいことは、まだまだたくさんあるんですが、時間が来たのでここまでです。」
せっかくなので、居残っていくつか質問。少し取材モードに。
「正常な人は、食後の血糖が基準値をオーバーしないんですか? それとも、オーバーしても、短時間で下がるんですか?」
「越えないんですよ。それが正常な状態なんです。」
「講義の最初に、『糖尿病』という病名は、病気の態を表していないと言ってましたね。僕も、その響きというか印象の点から、名称を変えた方が良いと思うんです。」
「医師の方でも、糖尿病と聞くと、甘い物を食べすぎた患者とイメージする人もいるくらいで。私は『慢性高血糖症』あたりが良いと思っているんですが。」
「糖尿病という名称は日本独特のものですか? それとも、やっぱり西洋医学用語の直訳ですか?」
「直訳ですね。『甘い尿』と呼びますから。病名については、この先十年とか十五年たったころには改称されている可能性はありますけど、今のところはこのままです。」
もっと話を聞きたかったな。

14時45分、病室に帰還。ふとベッドの上を見ると手ごろな大きさの箱が。
メモが挟み込まれていて、やはり「ハコダテ150」仲間のあんきもさんだった。
洋梨さんのときも留守をしてたし、どうも女性には見舞い縁がないのかも。

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◆スパイが隠し持っていそうな物体。

覗いてみたらカレイドスコープでした。
筒の先っぽが球面レンズになっていて、外の景色を織り込んだ万華鏡画像を楽しめる。
窓の外に向けて、しばらくの間くるくる回しながら覗きこんでいた。
たぶん、その姿は向かいの窓を小型望遠鏡でノゾキ行為をする男だったに違いない。
ありがとう。

和也さんから電話があって、入稿済みの原稿の内容でトラブル。
書いても気持ちがささくれるだけなので書かない。

15時半くらいかな。やはり「ハコダテ150」仲間で、雑誌「JAM」の小林さんが来る。
チーム(見るからに)不健康のメンバーである。と、勝手にいま決めた。
最初はまじめに病気のお話。だんだん話がよれて、家電製品の話とか、
ガンプラの話とか、公共広告機構の話とか、レコードの話とか、エスパーの話とか。
エスパーの話だけを書いておく。
僕の事務所の近くに「エスパー電機」というお店があるって話題
(小林さんが高校生のときお世話になったそうだ)と、
僕の自宅の近くに「エスパーB」というアパートがあるという話題。
それだけ。あっ、マイケルジャクソンとユリゲラーの話もした。
わざわざありがとうございます。

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◆お茶セットの差し入れ。入院してお茶長者になれそうだ。

仕事場、じゃなくてベッドに戻って、次の原稿に着手。
筆がのってきたところで晩飯の時間に。

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◆バナナは残しちゃいました。おやつに入らないのに。

ご飯、味噌汁、ブロッコリーとカリフラワー、パスタのサラダ、いも、鶏肉。
鶏肉料理うますぎ。なんか炭水化物が多い気がする。腹がふくれた。
飯のあと、お向かいさんと保険の話。ガン保険の素晴らしさを教えていただく。

原稿の続き。19時半こと脱稿。ギリでした。
小樽の妻に電話。今日はマンモグラフィ検診を受けたそうだ。
おっぱいをずいぶんと引っぱられたらしい。
押しつぶす器具がスケルトン(透明)素材で、押しつぶされていくおっぱいが、
よくよく観察できたとのこと。そんなに痛くなかったと言っていた。

明日は例のターゲスだ。採血7回。
鼻血ならすぐに出るんだけどな。鼻からぽたぽた採血ってダメなんかね。
ごりごりと仕事をすると疲れるなぁ。やっぱり。

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プロフィール

高山潤
函館市および道南圏(渡島・檜山)を拠点に活動するフリーランスのライター、編集者、版元、TVディレクター、奥尻島旅人。元C型肝炎患者(抗ウィルス治療でウィルス再燃、インターフェロン・リバビリン併用療法でウィルス消滅で寛解)、2型糖尿病患者(慢性高血糖症・DM・2009年6月より療養中)。酒豪。函館市(亀田地区)出身、第一次オイルショックの年に生まれる。父母はいわゆる団塊世代。取材活動のテーマは、民衆史(色川史学)を軸にした人・街・暮らしのルポルタージュ、地域の文化や歴史の再発見、身近な話題や出来事への驚きと感動。詳しくはWEBサイト「ものかき工房」にて。NCV「函館酒場寄港」案内人、NCV「函館図鑑」調査員(企画・構成・取材・出演・ナレーション)。


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