糖尿病入院日記:7月16日(書き直し。腎臓生検査など。)

7月15日(木)【リロード】

(あ、晴れた。よし気分はよい。書こう。)

慢性高血糖症(糖尿病)による入院十二日目。
函館中央病院の糖尿病クリニカルパスに基づく入院体験の記録。
※以前の日記で「クリティカルパス」と誤記していた。

お爺さんが退院した。木古内の人だった。
長かったのだろうか。看護師さんが、何人も見送りの挨拶をしていた。
キャラメルが好きで、くちゃくちゃと食べていた。
僕のキャラメルコレクション(50種ほどある)を差し上げようかとも思ったが、
賞味期限も切れているので、それはやめにした。

午前中は「海藻おしば」作品の仕上げ作業。
市立はこだて幼稚園の園児と保護者ががつくったものだ。
幼稚園に電話をして、午前中には完成するのでと伝える。
看護師さんが、これ海藻なの? と驚いていた。
ちょうだいと言われるも、そりゃ無理だ。協会の講座に参加してくれ。

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◆仕事部屋から工房に変身。つーか、病室ですから。

向かいのおじさんと、また病気の話。尊厳死の話。医療制度の話。
おじさんは検査のために、朝食は重湯で昼食は抜き。
しきりに、豪華な食事だと嘆いていた。そのたびに笑う。

昼食、なんと八宝菜が出やがる。
タケノコだらけだ。本来なら皿ごと食べない。
しかし、憎むべき空腹は、俺に28年ぶりくらいに八宝菜を食べさせた。
とろりとした汁に、少しタケノコの味が漂っている。
くそ。こんな状況でなければ、お前なぞ食べてやらないのに。
きっちりタケノコは残して食べ終える。
なぜ、こんなにタケノコと八宝菜を恨むのか。
それは小学校1年生のときの給食(日吉ヶ丘小学校1年1組にて)にさかのぼる。
その日の温食は八宝菜だった。そういや、当時は米飯給食は週1回しかなくて、
あとはどんなおかずでもパンを食わされていた。いびつな話だ。
で、八宝菜。当時まだ標準体重以下で、やせていた俺(ほんとだって)。
なんとなく最後に残った八宝菜。
そして、カップの底にごろりと鎮座した大きめの物体。
先割れスプーンにて突き刺し、そいつを口に入れた。
(当時、隣の席の好きな子にスプーンの持ち方が変だと言われたっけ。嫌なことばかり思い出すなぁ。)
ひとかじり。
ぐぇー、えろえろおろおろおろげろげろげー。
この話をすると確実に鳥肌が立つ。思えば、あれがタケノコだった。
口中に広がった不気味な甘い汁。よくあんなものをみんな食べるもんだ。
俺の繊細な味覚には、まったく合わない。
ということで、タケノコが食べられなくなった。怨嗟。

13時10分、看護師詰め所に寄って外出許可証を受け取る。
「今日の教室は大丈夫なのかい?」と今朝の看護師。
「1回受けたコマなので。」
「ぜんぶ覚えた?」
「あー、もちろんですよ。」
「帰ってきたら小テストします。」
ここは職員室か。
緊張すると、その場に順応するまで汗が噴き出すたちで、
しかも、あっ汗が流れているのを見られている、と思うとさらに汗が出る。
職員室は、そんな汗が出る場所だった。
今でも仕事で学校の職員室などへ行くと、ちょっと気圧される感じがする。

お散歩に出発。
電車通りを真っ直ぐ函館駅方面へ。
昭和橋を渡って、合同庁舎の手前で右折。新川町の広小路を歩いていく。
13時40分、丸山靴店。新調の靴にはきかえる。防水スプレーを買う。
事務所に向かって出発。
まだ靴が慣れないので、これまでと違う場所に力がかかるような気がする。

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◆若松町に先月オープンしたお店。星野さんと「REA」のスペルが違うんじゃないのかと話していたが。なにか意図があるんだろうか。

事務所に到着する手前で万歩計を確認。
あれ、1800歩? そんなはずない。設置箇所が悪かったみたいだ。
海岸町の事務所。
俺の車は、潮風と西日にあてられて、順調に白く変色していっている。
やっぱ、エネオスのコーティング洗車は、赤い車にあわないな。
今年も、また磨いてもらわなくちゃダメかもわからん。

事務所で星野さんと麦茶。ラッシーをからかう。
青函博(1988年)の報告書をあげつらう。
15時、そろそろ出発しなければ。
こんどは腹の真ん前に万歩計を取り付ける。

国道5号(国道の場合は「線」が付かない)から、西警察署のある松代通り。
中の橋を渡り、公園通り。共愛会病院の前を歩く。
ちなみに、この橋から下流で亀田川の様相は変化する。
川幅が広くなる真っ直ぐに流れる。大森浜(津軽海峡)まで直進だ。
これはつまり、かつてこの場所から、川の付け替えがおこなわれたということ。

向こうから浅黒い細面の青年が歩いてくる。
じっと俺を見ている。いやだなー。にらみ返す勇気もないし、
眼の焦点を合わせずに、ぼんやりした顔をして足早にすれ違おうとする。
いきなり、青年が立ち止まる。「高山さんですよね。」
誰だ。知らん。「わからないっすか」。
うーん、顔は見たことがあるが、なんか全体的な印象に違和感が。
「江差まで迎えに行ったのに。丸山さんと。」
あーあーあー、FMいるかのADだった人だ。
名前は覚えてないけど。「吉田ですよ。太一です。」(名前違ってたらゴメン)
彼は東京でAV製作会社に入社したと丸山くんから聞いていたけど。
「なに、夢破れて帰ってきたの?」
「そんなことないっす。」
「でも、だいぶガリっとやせたね。体壊した?」
(より)かっこよくなって、服屋のお兄さんっぽい。
だいぶ変わったから、気がつかねーよ。
「かるく胃潰瘍です。それに、親が服屋を開店しまして、アメリカからの仕入れがあるので、僕に手伝いをということで。」
あー、君はアメリカ留学してたんだもんね。ドットをダァットと発音するんだよね。
お店はどこなの?
「すぐ底です。この交差点の先です。」
あっ、あれかい? 「巴亜麻」って看板。前から気になってたんだけど。
「違います。『AKT』って言います。」
そうかそうか。ぜんぜん力になれないけど、がんばってね。
もうすぐ退院なので、飲みに行きましょう。AV現場の話を聞かせてください。
(彼がAV業界に就職していたかどうか、事実確認はおこなっていません。)

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◆これがお店。元「ロリアン」のあった場所。ロリアンと言えば、本通の実家の近くに「ロリアン」という店があったな。30年くらい前だけど。その隣は書店だった。よく「ドラえもん」の単行本を買った。道路を挟んだ並びには文房具屋があった。いまのダイソー山の手店がある交差点だ。あそこはヤマハかなんかのビルだったように記憶している。

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◆なんか貼り紙がしてあったので掲載しておく。

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会話ってのは、実践的に使わないと身に付かないものだ。
小学校への英語教育導入も決まった(んだっけ?)し、
そんなことより、思考や視差を深めるには、
やはり複数の言葉(と言葉が表現する文化)を学ぶべきだ。

俺は日本語(東京語)と函館語の会話、そして松前語の聞き取りしかできないけど。
それでも、都会と街と村の意識の違いなんてものを感じたり考えたりできる。

立ち話をしているうちに門限がせまる。
マリエールの裏手から丸井の向かいに抜けて病院到着。
約束の15時半。ぴったり。海岸町から病院まで4654歩。

病棟のエレベーターのトビラが開く。
15人くらいの妊婦が行進しながら出てくる。
あれ、ボタンを操作している妊婦さん、見たことある顔だなぁ。
あんきもさんだった。
「散歩に出かけるときも後ろ姿を見たんですよ」
そうだったんだ。

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◆春先の画像。2cmだって。今は2kgほど。性別は確認していないそうだ。きっと強い子が生まれてくるよ。写真うつりも良いし。

病棟のロビーが混雑していたので、仕事場じゃなくて病室で話をする。
15時50分ころ、主治医が回診。昨日のターゲスのデータを持ってきてくれる。
(詳しくは別項にて。)
あんきもさんを「カミさんです」と紹介すると、まんまと騙されていた。
悲鳴のような声であんきもさんに否定されたけど。
「血糖値はあかなり改善しました。ほんとうに、どんな食事をしてたんでしょうね」
と、先生があんきもさんに説明をしだす。あのね。包囲網をつくるつもりか。
「高山さんはオブラートに包んで言っても通じないので。」
「あっ、わかります。」
あきらかに、こちらが劣勢である。
ほんとにカミさんに叱られているみたいだ。
話題を変えるために診断書の件を聞いてみた。
「あっ、それはそのくらい時間をいただいてます。最大で2週間ということです。事務から書類が来るのに数日。すぐに書けるときもありますし、なかなか着手できないこともあります。」
この先は、書くべきかどうか迷ったが、お互い大人の発言だし。
僕がブログを書いていることは知っているわけだし。
きっと、ふだんはそういう発言はしないんだろうけど。
「だって、診断書を●●し●も、●●は●●●も●●●せん●●。お●●ですからね。」
あっ、やっぱ、俺はジャーナリストじゃないし、医師との良好な関係を築きたいので。
思わせぶりでゴメンね。
先生が帰ったあと、なぜか、あんきもさんが小声で「めちゃくちゃ美人ですね」と感想。
大声で聞こえるように言ったら、早く診断書を書いてもらえるかも知れないのに。

16時10分、泌尿器科から呼び出しがあったので、あんきもさんとお別れ。
ありがとうございました。それにしても、札幌に行ってしまうのは寂しいねー。

泌尿器科も美人医師なんだよな。いや、別に容姿には興味ないんですがね。
ただ、今日はメガネじゃないな、とか観察してみたり。
先生、なんとなく半笑いなんだよね。
「9月10日の入院ということで。それまでに、体重を減らすということでしたね」。
主治医の先生と「俺」に関する情報交換があったようだ。
「がりがりになるくらい痩せるそうですね」と言って笑っている。
なにを吹き込んだんだ。
「そら無理ですが、できれば6kgくらいは。」
医師と看護師さんから同時に、「聞きましたよ」と言われた。
「10日は仏滅ですね。」
「気にしますか?」
「いいえ、ぜんぜん」。ほんとは結婚式も仏滅にしようと思ったんだけど、
俺以外の全員に反対されたんだよね。創始改名もダメだと言われた。

まだちょっと先の話だが、次の入院は腎臓の生検査だ。
いろいろ説明を受けて恐怖が募った。
背中からぷすりと針を刺して、腎臓の細胞を採取して検査する。
僕の腎臓の症状(尿蛋白が4+)が、糖尿病によるものなのか、生まれつきなのか、
そういつに診断を付けるためのものだ。主治医は後者かも知れないと。
針は1本かと思ったら、15本くらい刺すんだそうだ。
「あの、タンスにぶつけた足の小指の痛さを5とすると、10段階評価でどのくらいの痛みですかね?」
入院説明をしていた看護師さんが、カーテンの後ろに駆けだして、
あきらかにベテランの看護師さんを連れてくる。
「局所麻酔をしますから、中学生でも耐えられる痛みですよ。そりゃ、針を刺すので痛いですが、我慢できないことはありません。」
はぁぁ、痛いってことか。胸が苦しくなる。
「手術室で検査をして、短くて半日はベッドの上で安静です。」
あっ、ということは。「あの、カテーテルとかも、怖いんですが。」
「バルーンですね。うん、じゃあ、病棟に電話してみるから。」
さっと聞いてくれて、尿瓶ですと教えてくれた。
「えーと、検査と入院の費用なんですが、おいくら万円なんでしょうか?」
これもすぐに電話をしてくれたが、担当者不在ということで明日の午後に確認することに。
入院日数がわからないから概算だという。
確認すると、これは手術ではなくて、検査だそうだ。
体に、というか、内臓にたくさん針を刺すのに。治療行為ではないけど。
ということは、生命保険がおりないんだな。
短期間の入院には給付金は付いてないし、手術見舞い金の対象にもならんし。
秋くらいには破産するかもしれん。そうなったら、健康な体で放浪の旅にでよう。

そして夕食。

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◆こんなにご立派な夕食だったので、思わず薬を飲み忘れたわけだ。いつもと違って、皿のレイアウトに手を加えた。3割くらい見た目の美味加減がアップする。

20時40分には、泣きながら寝てしまった。

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プロフィール

高山潤
函館市および道南圏(渡島・檜山)を拠点に活動するフリーランスのライター、編集者、版元、TVディレクター、奥尻島旅人。元C型肝炎患者(抗ウィルス治療でウィルス再燃、インターフェロン・リバビリン併用療法でウィルス消滅で寛解)、2型糖尿病患者(慢性高血糖症・DM・2009年6月より療養中)。酒豪。函館市(亀田地区)出身、第一次オイルショックの年に生まれる。父母はいわゆる団塊世代。取材活動のテーマは、民衆史(色川史学)を軸にした人・街・暮らしのルポルタージュ、地域の文化や歴史の再発見、身近な話題や出来事への驚きと感動。詳しくはWEBサイト「ものかき工房」にて。NCV「函館酒場寄港」案内人、NCV「函館図鑑」調査員(企画・構成・取材・出演・ナレーション)。


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