糖尿病と暮らす日々:2月15日後半(腎生検で二泊三日 -- 痛みへの悪あがき。 -- )

腎生検による検査入院、初日の続き。

14時半、病棟2階まで降りてレントゲンと心電図の検査。
どちらの技師からも「入院中ですよね?」と確認される。
寝間着(病衣)じゃないからだろう。
ちなみに、病衣はレンタルで1日70円。LLサイズにした。

ノートパソコンを移動式のテーブルに置いて、
ベッドに座って仕事することにした。これは良い。
これだと、お尻がかなり楽だ。坐骨神経痛にはパイプイスは辛い。
中央病院では貸してもらえなかったんだよね。
ま、仕事したいから、なんてのは病院の備品を借りる理由にならないけど。

退院直後に〆切が控えている道新「葬儀特集」の下調べ。
病棟にあるロビーから、納棺師に取材アポイントを入れる電話。
ちょうど仕事に取りかかるところのなで、後ほど折り返す、と言われた。
入院中なので、とは言えないので留守電への伝言を頼む。
なんとなく、複雑な気分になる電話だ。


16時前、腎臓内科の担当医師が来る。あれ、女性だ。
外来の先生と違う。理由を尋ねたら、入院中はチーム制なんだそうだ。
痛みについて質問。
「個人差ですが、泣きうめくほどの患者さんはいませんでしたよ」と。
医師と言えども、すべての検査を経験しているわけじゃないんだよね。
詳しくは検査担当の泌尿器の先生に聞いて、とのこと。
むかし、「新しい単位」とかいうテレビ番組で、
痛みの統一単位「hanage」ってのがあった。
鼻毛を抜く痛みを1として算出する。
医師に「鼻毛を抜くのと比べたら、どれくらい痛いですか?」
と聞いたら、冷たく笑ってわかりませんと言われた。気持ち良い。
鼻毛を抜くのが趣味なので、鼻毛の痛みには耐性がある。

ちょうど、前回の糖尿病入院のころから、
下半身の痛みや痺れが気になりだした。
最初は、入院中にパイプイスに座って仕事しすぎたのが原因かと思っていた。
かなりの頻度で整体に通ってみたが、症状は改善しない。
そんなわけで、10月くらいに函館中央病院の整形で診察を受けた。
以前、たまたま病院内で橋本院長(整形が専門)とすれ違ったとき、
坐骨神経痛が辛くて、と言ったら、診察に来なさいと言われていた。
  院長は飲酒番組の視聴者なのだ。
で、レントゲンとかMRIを撮影して、ようやく原因が特定された。
胸椎後縦靱帯骨化症・胸椎黄色靱帯骨化症。OPLL。
病気が進むと特定疾患(いわゆる難病。公費負担医療)となる。
とにかく、僕の場合は寝転がる姿勢になると、
両足首から下が猛烈に痛む。ふだんも痺れている。

明日、手術後は腎臓の止血(寝っ転がって圧迫することで止血)のために、
仰向けで絶対安静にしてなくちゃいけない。
24時間も。こいつは辛い。
自由に姿勢を変えられる普段でも、ひどい時は痛みで眠れないからね。
医師に、その点について相談。
あるていど身を起こすことは可能だと言われる。
痛みがひどい時には、痛み止めを投与できるそうだ。
ちょっと、痛み止めの効果を体験してみたい気もする。


16時ころ、病院の薬剤師が薬の説明に来る。
だいぶ分厚くなった自分の病歴ファイルを取り出して、
調剤薬局からもらって保存している薬の説明紙のページを開くと、
「高山さんは薬の勉強もされているようで」とお愛想をもらう。
というわけで、通り一遍の説明ではなく、
もう少し薬が効くメカニズム的なことも説明してもらった。

αグルコシダーゼ阻害剤(食後の高血糖状態を抑える薬)である
ベイスンOD(ジェネリックだとボグリボースOD)の説明がおもしろかった。
「これ、すっごくオナラが出るんですよね」と話をふると、
そうなんですよ、と食い付いてくる。
この副作用は、薬が効いている証拠なんだと、初めて知った。
なるほどなるほど。
「どれくらいオナラ出ますか? すごく興味があります。」
素晴らしき職業意識。
男性にオナラの回数で言い寄られるとは思ってもみなかったが。


17時、検査(針を刺す)担当の医師による面談。
明日は10時半くらいになりそうだ。
口頭と文書による検査(医師は手術と言っていた)のリスク説明。
やっぱり、痛みについての質問をしてしまう。
「皮膚は5ミリほど切開します。
 そこから針を刺し、腎臓から4本ほどの組織を採取します。
 腎臓に針を刺すときに、痛みを覚えるようです。」
「けっこう痛いですか?」
「うーん。痛いというか、押される感じと表現する人が多いですね。」
ううううううう。もう覚悟しなくちゃ。
俺はぜったいに出産できねーな。ほんと。
でも、それなりのお金を払うんだ。
しっかり検査していただいて、はっきり腎臓の状態を調べてもらおう。
はぁ。それにしても、糖尿病発覚以来、ずいぶんと体に投資してるなぁ。
ちゃんと回収しなくちゃ。


隣のベッドのおじさんが、しきりにメジャーで病室内を計測していた。
入り口の広さや高さ、ベッドの間隔とか、ひとしきり測っていた。
なんだろ。そういう仕事の人なのか。
まぁ、こちらも一日中、病人らしくない格好で、
パソコンをべったり抱きかかえてるんだから、不思議さでは引き分けか。
そのおじさんがカーテンを少しめくって、
「これどうやんだべ。若いもんならわかるべ」と声をかけてくる。
手に握った携帯電話を渡される。画面を見ると、EZアプリが起動されかけてた。
「これは切るのボタンを押せばいいんですよ」とポチ。
入院病棟では、患者同士のコミュニケーションは大切。
いちど会話しておけば、小さな物音レベルではイライラしなくなる。

患者と看護師の会話に笑ってしまう。
「痛み止めをもっと大っきなやつにしてくれや。」
「効き目は大きさ関係ないから。」
「あんまり効きすぎれば、明日起きないんでないべか。」
「大丈夫ですよ。ちゃんと起こしますから。」
「そのまんま、上の方にいっちまうべ。」
「心電図も付けてますから、大丈夫です。」
悲壮感がありつつ、でも笑える会話。看護師さんの訛りが良かった。

やっぱり、日が長くなったなぁ。
18時、夕飯。

100215-38327.JPG
◆ご飯(180g) 鶏から揚げ 大根の酢の物 からし菜和え ゼリー
◆702kcal タンパク質14.9g 脂質17.0g 塩分0.9g

から揚げ。極小が2個だけど、嬉しい。ゆっくり味わう。
ご飯が多い。ふだんは150g(3単位240kcal)なので、たっぷり感あり。
まだ、三食ぜんぶを食べていないから断定できないけど、
同じ社会福祉法人が運営する函館中央病院と五稜郭病院だけど、
食事内容の方針が違うのかもね。
中央病院では、おかずの量(または品目)が多かった印象。
五稜郭病院では、お米をしっかりたべて、おかずからの塩分摂取を控える作戦か。
もしかすると、僕の食事が塩分軽減メニューになってるからかも知れないが。
ゼリーは150kcalもあった。残して冷蔵庫へ。


夕食後、ばたばたと電話。病室とロビーを行ったり来たり。
寝間着に着替える。楽だな。

19時ころ、病棟の看護師長が来る。
「はじめまして。●●です。今日一日、なにか不安に感じたこと、
 聞き忘れたことなどありますか?」
丁寧な看護だ。
そうだ。たしかに、聞き忘れていたことがあった。
「手術後の排尿と排便はどうするんでしょうか?」
カテーテルとかイヤだな。
「尿は尿器(尿瓶だろう)にしていただきます。
 ご自分でも良いですし、私たちが介助することもできます。」
いやーん。思わず手で顔をふさぐ。
「排便は落ち着かないと思いますが、
 ベッドの上で便器を差し込んでお願いします。」
あー、そっかー。24時間だとガマンしきれんよなぁ。
「心配ですよねぇ。医師と相談の上で、
 排便の際だけトイレまで車イスで移動できる場合もありますので。」
「あっ、それ強烈にプッシュしてください。」
「わかりましたよ。」

いや、些細なことだけどね。あらためて、人の尊厳とか考えたり。
健康が一番だ。いろんな方面で。

携帯電話の専用イヤホンを忘れてきちゃった。
ワンセグでテレビを見ようと思ってたのに。失敗した。
テレビカードを買うのもしゃくなので、早く横になることにする。
明日はブログを更新できないかも知れないので。
続きは、たぶんツイッターで。
手術中とか実況できないかな。俺の不安と痛みを感染させてやる!
迷惑? ですね。

そういや、ツイッターついでに。
今日の午前中、函館のタウン誌「JAM」の編集者が、
来月号(3/20発行)からフリーマガジンになる、とつぶやいていた。
英断であり、正解だと思う。
「紙」という媒体を(延命ではなく)きちんと活き(生き)残し、
かつ今以上に楽しくやっていこうという決意。
「JAM」の進路には未来が見える。
硬直化しない思考と小回りのきいた決断に拍手。

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プロフィール

高山潤
函館市および道南圏(渡島・檜山)を拠点に活動するフリーランスのライター、編集者、版元、TVディレクター、奥尻島旅人。元C型肝炎患者(抗ウィルス治療でウィルス再燃、インターフェロン・リバビリン併用療法でウィルス消滅で寛解)、2型糖尿病患者(慢性高血糖症・DM・2009年6月より療養中)。酒豪。函館市(亀田地区)出身、第一次オイルショックの年に生まれる。父母はいわゆる団塊世代。取材活動のテーマは、民衆史(色川史学)を軸にした人・街・暮らしのルポルタージュ、地域の文化や歴史の再発見、身近な話題や出来事への驚きと感動。詳しくはWEBサイト「ものかき工房」にて。NCV「函館酒場寄港」案内人、NCV「函館図鑑」調査員(企画・構成・取材・出演・ナレーション)。


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