糖尿病と暮らす日々:2月16日(腎生検の日。)

昨夜は21時半には就寝。
そろそろ朝方かと思って目をさますと、
まだ午前2時過ぎだった。
そこから、1時間おきに目が開いてしまう。
眠いのと足が痛いのとで、睡眠と覚醒のせめぎあい。
午前5時、隣のベッドがごそごそいいだしたので、こちらも起きる。
まだ、病室も外も暗いので本は読めず。
(今回は講談社現代新書「性的なことば」だけを持ち込んだ。)
パソコンを開いて、腎生検を検索してしまう。
患者の体験談をいくつか読む。読まなきゃよかった。
腎生検って、「じんせいけん」と読むのだが、一発では漢字変換されない。
「じんぞう・なま・けんさ」と入力して、余計な文字を削除している。
なま・けんさ。戦慄の文字面である。

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◆6時45分。病室の窓から朝焼け。戸井・鉄山方面の稜線。

7時、体重測定。89.6kg。昨日の朝の自宅での計測より増量。
これは体重計の違いと、自宅では素っ裸で測るからだろう。
あと、今朝は用便を済ましていない。
少しのストレスでも便秘になるたちなので。
朝食抜きなので、血糖関連の薬以外は服用してしまう。
歯磨き、洗顔、頭拭き。ほんとうに頭部は坊主にしてから楽になった。
ベッドまわりをいったん整理。手術後は24時間ほど身動きできないため。
パソコンその他のポジションを確認しておく。

はぁぁ、糖尿病入院のときは気楽だったなぁ。

8時前、血圧測定。169の112。高い。
これはあきらかにストレスだろう。
看護師長にシャワーを浴びて良いか聞く。
本来の使用時間は9時からだが、手術前ということで許可をいただく。
誰かに決裁を仰がなくちゃ動かないものは、
ダメだろうか、と悩む前に、口に出してお願いしちゃうのがいちばん。
たとえば、自分は病気じゃないだろうか、と悩んでいるあなた。
悩んでも考えても、僕らは診断も治療もできない。
とっとと病院へ行って、診断をつけてもらったほうが気楽です。

五稜郭病院では、入浴は午前午後で男女入れ替え、シャワーはほぼ自由に。
なんて恵まれた環境なのだろうか。

排便。なかなか快調に出た。
いま体重測定したら、さっきより500gは軽いはずだ。
8時半、検査担当の医師がベッドに来る。
また違う先生だ。不安にはならないけど、ちょっと混乱する。
そのつど、痛いのコワイんすけど、よろしくお願いします。と頭を下げる。
「手術後、1時間は絶対安静で。
 そのあとは、トイレに車イスで行けますから。
 基本はベッドで仰向けです。」
おお、ありがたい。昨日の嘆願が通じたようだ。
これで少しストレスが減った。

まだ検査まで時間があるので、ひと仕事しようかと思ったが、
いまいち手につかないので、iPodで音楽を聴きながらストレッチ。
さ、あと30分。
看護師が来て点滴を開始。これは化膿止めのはず。
「検査はあっという間ですから。」
そうあってほしいものだ。
立て続けに、医師の回診。また、別の医師が来た。
「検査これからですね。がんばってください。」と言って去る。
がんばれ、か。まぁ、他に言い方がないよな。

なんだか左腕が冷たいなぁと思っていたら、点滴の薬液が漏れてるじゃん。
看護師に伝えると、「あらショック」と。俺もショックだよ。
処置し直しているときに、別の看護師が来て、30分ほど遅れると伝言。
「ひとつ前の検査が手こずっているみたいです」
ああぁ、やっぱり手こずることがあるんだなぁ。
手足に嫌な汗。それなりの苦行。

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◆手術室へ移動直前。ベッドの上から窓からの風景を撮す。良い天気だなぁ。

11時、そろそろ行きますよ、と看護師。
覚悟を決める。うそ。逃げ出したい気分。
病室のベッドのまま手術室へ移動していく。
思いのほか移動速度が速く(寝転がっているので体感速度が速い)、
高速でコーナーにつっこむから、思わず笑ってしまう。

【手術中】の赤ランプをぼんやりと見ながら(メガネを外してたので)手術室へ。
SPITZ「涙がキラリ☆」を女性ボーカルでカバーした曲が流れていた。
好きな曲なので嬉しい。
青系の手術衣をつけた看護師・医師にあいさつされる。
テレビでしか見たことがなかった7つ目のでかい照明に震える。

手術台にうつぶせになって、まずはエコーで腎臓の位置を確認。
ぐりぐりと機器を押しつけられるも、なかなか腎臓が見えてこないようだ。
「深い。」「8cmくらい。」「ここか。」「うん。」「あれ?」
とかなんとか会話が聞こえてくる。
このまんま、腎臓が見つからなくて、検査延期にならんだろうか。
もうちょっと痩せてから来てくださいね。とか。
本気でそんなこと考えていた。逃げ出したい気分がつのるつのる。

10分ほどして、熟練した医師の手で腎臓は発見されたようだ。
てっきり(勝手に)右後ろを刺されるかと思っていたら、左に刺しますと宣告。
そっか。腎臓ってふたつあったっけ。
点滴が追加される。手のひらも足の裏もびっしょりと汗。
背中全体を消毒される。いよいよ来る。
「それでは、腎臓なんたらかんたら術式を始めます。よろしく。」
まずは局所麻酔。「プツっと痛いですよ。はいプツ。」と注射。
刺された瞬間は少し痛いが、すぐに麻酔が効いてくる。
ふたたび一瞬痛くなり、また痛みがすっと引く。
看護師が「痛いですよね。奥まで麻酔を効かせてますから。」とフォロー。
背中を撫でてくれたのが嬉しかった。
これ系の痛みは、うん大丈夫。がまんできる。
恐れているのは、腎臓に針を刺すという想像しがたい、
なんかこう、ぞわぞわするような痛みというか感触なのだ。

「いま痛いですか?」。医師があらためて聞く。大丈夫です。
「では、三回くらいパチンッという音がしますが驚かないでください。」
腎臓の組織を採取するための針が刺された、らしい。感覚ナシ。
エコーの機器を押し当てつつ狙いを定める。
「ではいきますよぉ」。来る。来る。来る。
パチンッ。
あれ、痛くねーや。圧迫感もナシ。
いやいや、角度を変えると痛みがあるのかも。
しばしごそごそとしたあと、ふたたび「いきます」の声。
パチンッ!
おろ、痛くねーぞ。手足の汗がひっこみ始める。
パチンッ!
はい。おしまい。
針を刺した部分をぐいぐい押して止血。

「すんません。質問しても良いですか?」
「どうぞぉ。」
「あの、やっぱり太っていたから、腎臓が見つけにくかったんですか?」
「いいえ、筋肉のせいですね。筋肉が厚かったので。」
へー。そんなはずないのに。ものかきとして恥ずかしいな。
「脂肪は?」
「いや、脂肪もありますが。」
「くくく。」
という会話をして手術室を出る。
手術中に頭にかぶせられた帽子を記念にください、と頼んだら
「血液が付着している可能性があるので。新しいのを差し上げますね」
と新品をもらう。コレクションにしよう。

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◆手術中にかぶっていた帽子(同型)。クラゲみたいだ。

病室に戻ったら12時10分すぎ。約1時間の出来事。
なんだか疲れて、ヘッドホンで音楽を聴きながら昼寝。
うつらうつら。検査が終わって、ほっとして気分がよい。
緊張が解けてくると、じわじわと足の痛みがぶり返してくる。

15時20分、看護師が昼食を持ってくる。
「ベッドを持ち上げますね」。説明なしに動かし始めるので、
枕元の本やら携帯やらがドサドサとずり落ちる。
約70度くらいまで身を起こし食事。
「点滴の針は後で抜きに来ますから。邪魔でしょうけど食事してください。」
なんだよ。抜いてくれよ。すぐに。刺さってるだけでストレスなのに。
なんだか血が逆流してて、あんまり良い気分じゃない。

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◆ご飯(おにぎり2個180g) 白身魚カレー風味揚げ ホウレン草のソテー 千切りキャベツ(ドレッシング) サツマイモの煮物
◆679kcal タンパク質15.8g 脂質22.1g 塩分1.3g

米と芋か。やっぱり炭水化物が多めのメニューに感じるな。
芋は残して、おにぎりも2口ほど残す。
味付けはちょうど良い。甘すぎず辛すぎず、調味料に頼らない味に感じる。
さて、食事終了。
こちらは身動きが取れないので、あとで来る、と言った看護師を待つ。
20分ほどして担当の看護師。
「ばたばたしてて。遅くなりました。」
仕方がないことだけど、
できれば点滴の針や管から解放された状態で食事がしたかったよ。

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◆こういう状態。

食後、このブログの続きを書き始める。
1時間ほどしてお尻が痛くなったので、ベッドを倒して姿勢を変えてもらおうと思い
ナースコールを探して愕然とする。手元にないじゃん。手が届かないじゃん。
あーっ、もーっ、これくらい配慮してくれよ。
お隣のご家族に声をかけようかとも思ったが、
なにやらガンの転移を告知されたらしく家族会議中だもんなぁ。
見回りも来ないし。夕食の配膳までガマンだなぁ。

17時前、北日本海運の高橋さんから電話。
「サイトの更新を・・・」
「実は入院してまして」
「うそ? 糖尿で?」
「いえ、腎臓の検査入院なんですけどね。」
「大丈夫なの?」
「いや、もう、呑みに行きたいっす。」
ルール違反だが、ベッドの上で小声で会話。許せ。

続けて、事務所お隣の星野さんから電話。
「あれ、電話は通じるんだ。」
「いやいや、手短にお願いします。」
「LANケーブルを持っていこうか?」
「あー、明日には退院するんで大丈夫です。」
持つべきものは隣の社長である。

18時、夕食。さっき食べたばかりだけど、片づかないので食べてしまう。

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◆ご飯(180g) おでん おひたし(もやし) サラダ(レタスとミカン) ゼリー(150kcal)
◆649kcal 11.6g 脂質15.9g 塩分1.1g

ゼリーは残して持ち帰ることにする。ゼリーのカロリーで、おでんを1つ増やしてほしい。
お向かいのお膳を見ていて気がついた。
俺には汁腕がないんだね。なるほど。そいつで、さらに塩分を抑えてたんだ。
ご飯をあましてしまうのも、そこに要因があったようだ。
でも、味噌汁はほしいなぁ。

あー、足が痺れる。
手術した箇所は、いまのところ特に痛みもナシ。
その辺は鈍感で良かった。

つーわけで、今日はここまで。
明日まで安静にして、朝の検査で出血などなければ午前中には退院。
夕方には取材アポイントも入っているし、順調に回復しろよ、俺の腎臓。


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プロフィール

高山潤
函館市および道南圏(渡島・檜山)を拠点に活動するフリーランスのライター、編集者、版元、TVディレクター、奥尻島旅人。元C型肝炎患者(抗ウィルス治療でウィルス再燃、インターフェロン・リバビリン併用療法でウィルス消滅で寛解)、2型糖尿病患者(慢性高血糖症・DM・2009年6月より療養中)。酒豪。函館市(亀田地区)出身、第一次オイルショックの年に生まれる。父母はいわゆる団塊世代。取材活動のテーマは、民衆史(色川史学)を軸にした人・街・暮らしのルポルタージュ、地域の文化や歴史の再発見、身近な話題や出来事への驚きと感動。詳しくはWEBサイト「ものかき工房」にて。NCV「函館酒場寄港」案内人、NCV「函館図鑑」調査員(企画・構成・取材・出演・ナレーション)。


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